学童期のお子さんをお持ちの保護者の方からのご相談として、わりと多い今回のお悩み。
『宿題をしない』
という行動からは、いくつかのサインが考えられるかと思います。
お子さんの困りの本質につながる、大切なサインですので、今回はその行動が表す意味について考えてみたいと思います。
可能性①勉強が難しい
知的発達に緩やかさがある場合、その学年の学習内容がお子さんに合っていないことがあります。
この場合、宿題だけではなく学校での授業にも支障がある場合が多いです。
こんな様子ありませんか?
◇授業内容についていくことが難しい。
◇テストで点数が取れない。(小学生の単元テストはだいたい80点くらいが平均)
知能指数はWISCなどの知能検査を受けることでも知ることができます。
が、お子さんの負担が大きい検査だと思いますので、日常の様子を見て明らかに困っているのなら、本人のペースに合った対応をすることが望ましいと私は思います。
可能性①への対応
学習内容が合っていないのだから、本人の理解度に合った学習内容を設定することが大切です。
◇宿題を本人のペースにあった内容に替えてもらう。
◇支援学級などを活用し、授業内容を本人のペースに合ったものが受けられるようにする。
可能性②宿題を把握していない
そもそも何が宿題として出ているのかを把握していない場合です。
小学生だと帰りの会などで配られ、連絡帳にメモをして帰ることが多いです。
中学生だと教科ごとに宿題が出ますので、授業中に連絡があったり、帰りの会で係から連絡があったりとさまざま。
こんな様子ありませんか?
◇配布プリントがカバンの中や引き出しの中でぐちゃぐちゃになっている。
◇スムーズにメモを取ることが苦手。
◇集団の中で話を聞くことに難しさがある。
把握していなければ、宿題をすることはできませんよね。
可能性②への対応
お子さん本人が宿題を把握できるようにすることが大切です。
◇毎日の宿題をパターン化する。
◇メモを記号などで簡略化する。
◇口頭で伝えるだけでなく、ホワイトボードなどに書く。
◇宿題のページに付箋をはる。
きちんと把握できるようにしても改善されない場合は、他の可能性を考えてみてください。
可能性③SLD(限局性学習症)かもしれない
『LD』『学習障害』という言葉は、教育現場でも一般的になってきたように感じています。
”限局性”という言葉が示すように、学習に必要なさまざまな力のうちの一部に困難さがあるということです。
可能性①の知的発達の緩やかさがある場合には、SLD(限局性学習症)には該当しません。
こんな様子ありませんか?
◇音読だけ(または、漢字だけ、計算だけ)やりたがらない。
◇書字…字形が整わない、鏡文字になる、画数が増えたり減ったりする
◇音読…意味のまとまりで読むことが難しい、読み間違えが多い
◇計算…数の大小を判別することが難しい、筆算や暗算が難しい など
上に書いた内容すべてに当てはまる場合は、可能性①を疑ったほうがいいです。
『音読はできるし漢字も書けるけど、算数の計算問題が分からない。』とか、『計算は問題ないけど、漢字を覚えることがまったく…』などの場合には、SLDの可能性を考えてみてください。
可能性③への対応
この場合はいろいろな状況が考えられるため、それぞれに合った対応が必要です。
◇音読…読む分量を減らす。意味のまとまりで区切る線を引く。
◇漢字…何度も書くのではなく、丁寧に一回書くなどの方法にする。
◇計算…具体物を使って考える。内容によっては電卓の使用もOKにする。
どうしても『〇〇が苦手』という考え方になってしまいがちですが、どちらかと言うと
学びのプロセスが少数派
なんだと考えます。
なので『本人に合った学習スタイル』を知ることが大切です。
可能性④疲れすぎ?エネルギー切れの場合
これは、小学生から中学生以上まですべての年代にかかわることで…
と、言うのも…
ほぼ毎日習い事をしていたり、中学生は部活が終わって帰宅するのが19時過ぎていたりなど…
小学生の低学年の子にも多いのが、学校で頑張りすぎて家で癇癪がひどくて宿題どころじゃないなどのケース。
こんな様子ありませんか?
◇優等生、いい子と言われ学校生活では特に問題がなさそう。
◇上とは逆で、授業中に疲れて寝ている。
◇朝起きるのがしんどそう。
◇帰ったらまず寝ている。
◇イライラしがちで怒りっぽい。 など
『疲れ』を自覚するのが難しいのが子どもです。
特に小学生のうちは大人が環境調整をする必要が大きいと思います。
可能性④への対応
キャパシティオーバーであることが考えられるので、どれくらいだったら無理なく継続できるスケジュールなのか見直すことが大切です。
◇習い事の日数や時間を調整する。
◇部活に参加する頻度を調整する。
上のような対応は『甘え』『甘やかし』なんじゃないかと考えられる方もいらっしゃいますが、無理しすぎて癇癪起こしたり、余暇のすべてを寝て過ごしたりなんかは本末転倒です。
人生100年…なんて言われてますので、自分にとって持続可能なスケジュールについて子どものときから考えるのは大切なことだと感じています。
宿題ってなんのためにするんだろう。
最近は、宿題を出さない学校や先生もいるようです。
しかし、たぶん『出す派』が圧倒的多数ではないでしょうか。
わたしが考える宿題を出す意味
わたし自身、教員時代宿題は『出す派』でした。その意味としては…
◇期日までに締め切りを守る練習(こっちが主)
◇学習内容の定着
宿題は『約束』『契約』だと思っていました。
それを守る意識を身に着ける手段としての『宿題』でした。
なので、どんな状態であれ『出す』ことを大切にしていたように思います。
『あ~ここが分からなかったのか。』『ここは次の授業でも復習したほうがいいな。』と、授業づくりに役立てることができます。
『ここまではできたけど…』という相談って、社会に出てからもたくさんあります。
それができる子になってほしいな、と思っていました。
わたしが考える宿題のデメリット
宿題の意味については上に書きましたが、別にそれは『宿題』という形を取らなくてもいいわけです。
学習内容の定着は授業中にやればいいわけですし、締め切りを守る練習も日々の学校生活の中で設定することは可能です。
わたし自身は、宿題には一定のメリットがあると考えていますが、デメリットになるとすればどんな場合でしょうか…
◇学習内容が本人に合っていない。(難しすぎる、簡単すぎる)
◇宿題をする時間がもったいない。(それくらい自発的に学習をしている。)
◇自発的に学ぶ意欲を妨げてしまう。
こんな感じでしょうか。
『宿題』って、やっぱり『やらされてる感』が強くなりがちかと思います。
自発的に、問題意識や目標をもって学ぶことができる子には、時間のムダになってしまうこともあるかもしれません。
さて、今回は『宿題をやりたがらない』ことに焦点を当ててお話してまいりました。
1つの行動をとってみても、いろいろな可能性が考えられます。
普段の様子や、お子さんの気持ちや考えも聞きながら、対応方法について考えていきたいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。